OpenAIが開発した「o3」モデルは、従来の大規模言語モデルに比べ、数学やコーディングといった論理的タスクで顕著な進歩を示している。この背景には、推論トレーニングと呼ばれる新たな学習工程の存在がある。これは、通常の事前学習後に強化学習を用いて複雑な問題解決能力を強化するフェーズであり、o3はその先駆け的存在である。
AI調査機関Epoch AIによると、OpenAIはo1の10倍の推論用計算資源を4カ月で投入し、o3を開発した。AIME数学ベンチマークでは、その計算量と性能の相関が明らかになっており、推論性能の向上における計算資源の役割が示唆されている。
一方で、NVIDIAやMicrosoftも異なるアプローチで推論モデルを発表しており、合成データや教師ありファインチューニングを利用している。計算量の比較は一様ではなく、”推論トレーニング”の定義そのものが曖昧である点も課題として浮上している。
現在、推論トレーニングは1e23〜1e24FLOP程度で行われており、Grok 3のような最大級モデルのトレーニング(1e26FLOP)と比べると、まだ成長の余地は大きい。しかし、高品質なタスクの生成や設計の労力といった“開発コスト”が、今後の拡張の壁となる可能性もある。
それでもOpenAIは、o3を活用した「Deep Research」などの応用を通じて、推論モデルの可能性を広げつつある。スケーリングがどこまで続くかは、技術・経済・コンテンツのバランス次第である。
※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
THE DECODER「Compute scaling drives reasoning model gains but cannot last forever」
コメント
AIの進化は単なる計算量の増加だけではなく、「何を学ばせ、どう強化するか」という設計がますます重要になっています。OpenAIの「o3」はその象徴であり、特に数学やソフトウェア分野における進歩は注目に値します。今後、他分野への応用や、開発コストをいかに抑えるかがカギとなりそうです。最新技術に関心のある方は、推論型モデルの動向をチェックしておくことをおすすめします。