OpenAIは将来的な株式上場(IPO)を視野に入れ、企業構造の大幅な見直しを進めているが、最大の出資者であるマイクロソフトとの関係が緊張状態にある。両社は現在、数十億ドル規模の提携契約の再交渉を行っており、OpenAIは営利部門を「公益法人(Public Benefit Corporation, PBC)」へと転換する計画を提示している。

マイクロソフトは2019年に最初の10億ドルを出資して以来、累計130億ドル以上を投資しており、契約には知的財産、製品使用権、収益分配などが含まれ、2030年まで有効である。報道によれば、マイクロソフトは将来的なPBCでの持ち株の一部放棄を検討しているが、その代わりに2030年以降の技術アクセスを確保する条件を提示している。

2023年には、ソフトバンクやThrive Capitalなどが参加した資金調達ラウンドで総額466億ドルを調達。PBC移行後に株式を受け取る予定のこれら投資家にとっても、再構築が頓挫すれば資金返還を求める可能性がある。

OpenAIは2019年に「利益上限付き」モデルを導入したが、資金調達の制約となっていた。2025年5月には非営利財団の監督下で利益上限を撤廃し、従来の株式制度を導入する方針を発表。数千億ドル規模の新データセンター建設資金を視野に入れている。

ただし、技術面での連携が続く一方で、OpenAIは独自の道を模索している。ソフトバンクやオラクルと連携する「Stargateプロジェクト」は、マイクロソフト依存からの脱却を目的としたものとされる。表向きにはAzureとの提携継続を強調しているが、内部では資金とガバナンスを巡る摩擦が続いている。

また、OpenAIは企業向けAI製品市場でもマイクロソフトと直接競合する動きを強めており、パートナーシップの行方が注目されている。

※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
THE DECODER「Microsoft could sacrifice some OpenAI shares – but wants to secure access to AI technology」

コメント

OpenAIの企業構造再編は、AI業界全体にとっても重要な転換点となる可能性があります。非営利からPBCへの移行や、株式上場を視野に入れた動きは、今後の資金調達やパートナーシップの在り方を大きく左右するでしょう。特に、長年の戦略的パートナーであるマイクロソフトとの関係が再調整されることで、AI開発競争の構図も変化するかもしれません。ユーザーとしても、この動向を注視することが求められます。