Microsoftは年次開発者会議「Build 2025」において、次世代のAI主導型インターネット「エージェンティックWeb」に向けた包括的な戦略を発表した。GitHubやAzure、Microsoft 365、Windowsなど50以上の製品にまたがるAIエージェント関連機能を一挙に公開し、企業向けの自律的AI活用を本格化させる。
この戦略の核となるのは、人間の指示に応じる従来型AIから、タスクを自ら判断・遂行し、他のAIとも協働できる「エージェント」への進化である。MicrosoftのCTOケビン・スコット氏は「記憶」と「推論能力」の向上が、今後のAIに不可欠だと強調し、これに対応する新技術「構造化RAG」などを発表した。
開発者向けには、GitHub Copilotがコード補完を超え、自律的にリファクタリングや機能追加を行う開発エージェントとして進化。さらに、Azure AI Foundryでは複数エージェントによる業務プロセスの自動化も可能となった。
ローカルAIにも注力しており、「Windows AI Foundry」により、Windows 11やMac上でAIモデルをデバイス内で直接実行できる開発環境が提供される。セキュリティ面では「Entra Agent ID」により企業内エージェント管理を強化し、ガバナンスや可観測性にも対応している。
また、科学研究分野では、新プラットフォーム「Discovery」が、従来数年かかっていた冷却材の新素材探索をわずか200時間で完了させるなど、AIエージェントが研究開発の時間軸を根本から短縮する事例も報告された。
Microsoftは今後、「Model Context Protocol」や「NLWeb」といったオープン標準を通じ、AIエージェントの相互運用性を高める方針であり、情報のWebからエージェントのWebへの転換を主導する立場を確立しつつある。
※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
VentureBeat「Microsoft announces over 50 AI tools to build the ‘agentic web’ at Build 2025」
コメント
今回の発表は、Microsoftが「AI時代のOS」としての地位を確立しようとしていることを強く印象づける内容でした。従来のAIチャットボットとは異なり、エージェントは判断・実行・連携が可能であり、業務効率化や研究開発のスピードに革命をもたらします。特に「ローカルAI」や「複数エージェントの連携」などは、コストやセキュリティの観点からも注目すべき進展です。今後、AI導入を検討する企業にとって、Microsoftの一手は大きな指針となるでしょう。