イスラエル発の量子コンピューティング企業Quantum Machinesは、量子コンピュータの校正(キャリブレーション)を飛躍的に効率化するオープンソースフレームワーク「Qualibrate(QUAlibrate)」を発表した。従来は数時間〜数日を要していた校正作業が、わずか数分で完了するという。
量子コンピュータは動作中に定期的な校正が必要であり、システムのスケールアップに伴いその負荷は指数関数的に増加する。たとえば、100量子ビットの超伝導量子マシンを初期化する場合、従来は最大で2日を要していた。これに対しQualibrateは、並列化されたモジュール構造により、このプロセスを約140秒で完了させた実績を持つ。
Qualibrateの大きな特長は、単なるツールではなく、校正手法を共有・改良し合えるグローバルなエコシステムを構築している点である。ボストンの研究者が開発した高精度プロトコルを、翌日には欧州企業が改良し即座に実装できる──こうしたコラボレーションが実現する設計となっている。
さらに、直感的なUIと再利用可能な構成要素により、量子システムのロジックに集中しながら、複雑なハードウェア制御を抽象化してくれる。現在はNVIDIAとの連携により、DGX Quantumなどのアクセラレータを活用した高速校正にも取り組んでいる。
Qualibrateの初期バージョンには、超伝導量子コンピュータ向けのキャリブレーショングラフも含まれており、即時導入が可能。企業独自の拡張開発も許容しており、量子システムの深層学習による最適化など高度な応用も視野に入れている。
GitHub上で公開されているため、研究者や開発者は今日からでも利用を開始できる。
※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
VentureBeat「Quantum Machines launches Qualibrate open source framework to speed quantum computer calibration」
コメント
量子コンピュータの運用において、時間と労力を要する校正作業は大きな障壁のひとつでしたが、「Qualibrate」の登場により、その常識が覆されつつあります。特にオープンソースであることから、世界中の研究者がノウハウを共有・改善できる点は大きな魅力です。今後、量子コンピューティングの実用化が加速する中で、このような共創型の技術基盤が重要な役割を果たしていくと考えられます。