音楽配信プラットフォームのSoundCloudは、2025年5月に利用規約を更新し、「ユーザーの明示的な同意がない限り、音声・音楽・肖像を模倣または合成する生成AIモデルの学習にコンテンツを使用しない」と明記した。これは、ユーザーによる明確なオプトインが必要であることを強調している。

この新方針は一見するとAI学習への制限を設けたように見えるが、細則には曖昧な部分も残る。実際、多くの生成AIは特定の声やスタイルを直接模倣する目的ではなく、膨大なデータセットから一般的なパターンを学習する。このため、個人の表現と集合的なスタイルの境界は曖昧であり、とりわけ音楽や声の分野では、影響と独自性が常に絡み合っている。

SoundCloudの姿勢は、OpenAIがスタジオジブリの作風を「スタジオスタイル」としてAI学習に利用可能とした論理と似通っている。この考え方には批判もあり、スタジオの作風も多くは個々のクリエイターによって形作られているとの指摘もある。

SoundCloudは2024年2月に規約を改定し、AI学習に利用できる余地を作っていたことが、著作権活動家によって指摘されている。同社は現在、アーティストの許諾なくAIモデルを訓練しておらず、内部での推奨機能や不正検出、コンテンツ整理のみにAIを利用していると述べている。ただし、今後の生成AIへの活用を完全には否定しておらず、透明性とオプトアウトの仕組みを設ける方針である。

※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
THE DECODER「Soundcloud updates its AI training policy, but it’s still unclear」

コメント

SoundCloudの新たな利用規約は、AI時代におけるクリエイターの権利保護に一歩踏み込んだ内容ですが、まだ十分とは言えません。AIによる音楽や声の模倣が技術的に可能となる中で、個人の表現とそのデータ利用の境界はますます不透明になっています。今後は、ユーザーの明確な同意と、利用の透明性が一層求められる時代となるでしょう。音楽を制作する方も聴く方も、自分のデータがどのように使われているのかに注意を払う必要があります。