Metaとフランスの複数の医療機関による最新研究により、人間の言語獲得とAIの学習過程に構造的な類似性があることが明らかとなった。研究では、てんかん治療のために脳内に電極を埋め込んだ2歳から46歳のフランス語話者46名を対象に、童話『星の王子さま』を聴いてもらいながら7,400以上の電極で脳活動を記録した。

結果、2〜5歳の幼児でも「b」や「k」などの音に対する反応が聴覚野で観測されたが、単語の意味や文法処理はより年長の子どもや大人の脳においてのみ確認された。また、年齢が上がるにつれて、言語処理のパターンは脳全体に広がり、反応時間が早く長くなる傾向が見られた。

研究チームはこの神経活動データを、音声認識AI「wav2vec 2.0」と大規模言語モデル「Llama 3.1」と比較。訓練後のAIモデルは人間の脳と類似した段階的処理を示し、特にLlama 3.1は大人の脳と同様に単語全体を把握する能力を獲得していた。これにより、AIモデルと人間の脳は、学習によって言語表現の階層構造を構築するという点で共通していることが示唆された。

ただし、AIは言語獲得に数十億語が必要なのに対し、人間は数百万語で獲得できるなど、効率面では依然として生物が優位である。

※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
THE DECODER「How ‘The Little Prince’ and AI help us better understand language development in the brain」

コメント

この研究は、人間の脳と言語AIモデルの発達が驚くほど似ていることを示しており、AIの仕組みを通じて私たち自身の言語獲得過程を理解する新たな手がかりとなります。とくに、AIが子どもの脳のように学習を重ねて複雑な言語理解に到達するという構造的な類似は非常に興味深いですね。今後、AIと神経科学の融合がさらなる脳理解の進展につながることが期待されます。