数十億ドル規模のAI投資と米国製半導体の新たな輸出契約が、中東における地政学的勢力図を塗り替えつつある。サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は、シリコンバレーの支援を受けながら、AIハブとしての地位を確立しようとしている。

サウジアラビアは、新たなAI企業「Humain」を設立。ムハンマド皇太子が会長を務め、国内外向けのアラビア語モデルの開発とデータセンターの建設を主導する。これは、同国の国家AI戦略の中核を担う存在となる見込みであり、設立のタイミングはトランプ大統領のリヤド訪問直前に重なる。訪問と同時に開催される米サウジ投資フォーラムには、イーロン・マスク氏、サム・アルトマン氏、マーク・ザッカーバーグ氏らの参加が見込まれており、AI、防衛、インフラ分野での数十億ドル規模の契約が発表される予定である。

Humainは、約9,400億ドルの資産を持つサウジの政府系ファンド「公共投資基金(PIF)」が全額出資しており、同基金はAIハードウェアへの1,000億ドル投資を目指す「Alat」などのプロジェクトも展開している。

一方、米国政府はUAEのAI企業「G42」への大規模なAIチップ輸出を交渉中であり、数十万個規模のNvidiaおよびAMD製チップがOpenAIとの提携およびG42に直接供給される可能性がある。バイデン政権下では中国関連企業への技術流出リスクを警戒し、輸出制限を強化していたが、トランプ政権はこの政策を撤回し、友好国との個別合意に舵を切った。

OpenAIのアルトマン氏は以前から中東における計算資源の拡充を訴えており、Microsoftとの連携を含めた地域インフラ整備に積極的である。現在、G42は米国製チップを使用してMicrosoftのサービスを提供する一方、独立運用を望み、さらなるアクセス権限を求めている。

今後、サウジおよびUAEをはじめとする中東諸国は、米国との戦略的パートナーシップを強化し、AI時代における新たな地政学的中心地となる可能性が高まっている。

※本記事は、以下の記事をもとに翻訳・要約しています。
THE DECODER「Saudi Arabia founds AI company “Humain” – US relaxes chip export rules for Gulf states」

コメント

AIと地政学が交差する時代において、中東が新たな主役に浮上しています。サウジアラビアやUAEは、AI技術のインフラと独自モデルの開発を国家戦略に据え、米国の技術企業や政府との連携を深めつつあります。AIが経済だけでなく国際政治にも影響を与える中で、日本を含む他国もこの動向に注視すべきタイミングと言えるでしょう。